とある事務方の備忘録

いち事務方の「私はこう考える」ブログ

大きな方向性

昨日、参議院改革協議会(通称・参改協)より、参議院改革に関する協議の総論について報告書が出たそうです。


参議院HP https://www.sangiin.go.jp/japanese/kon_kokkaijyoho/sankaikyou/r3/pdf/r4kyougikai_houkoku.pdf

 

鳥取・島根・徳島・高知が待ち望む公選法の改正(合区解消)まで辿りつけなかったのは残念ですが、コロナ禍その他の事情の中で与野党協議を重ね、与党第一会派・野党第一会派間で合意した大きな方向性を打ち出せたことは、評価に値するのではないでしょうか。

座長の発言どおり、令和7年通常選挙までに報告書をベースとして「地方代表的性格」「合区解消」の方向性に沿った議論が進むことを期待したいものです。

 

同日の憲法審査会でも、上智大(←近畿大)の上田健介教授が、参議院の今後について

  1. 衆参の同質化の現状を継続し、投票価値の平等要請に応じていく
  2. 衆参を異質化(参側の上院化、特定機能への特化)し、要請圧力を緩和する

という2種類の方向性(教授は2.寄り)を打ち出していました。

 

私も数年前に教授のお話を伺って以来、多々自分なりに学んできましたが、2.の立場です。
これについては何度も書いていますが、やはり変わりありません。

 

上院化については、

  • 衆院側で全会派一致したものに関しては審査を省略・簡略化する(英国・ソールズベリ習律)
  • 法案の再議決要件の緩和(改憲し2/3→過半数に)
  • 政府に政務三役(大臣・副大臣政務官)を出さない

といった方向があります。

 

特定機能という決算機能・行政監視機能(あとODA?)が強調される参議院ですが、全会一致を目指す+所属政党関係から与党が踏み込めない/野党が踏み込み過ぎるところもあるので、報告書にある「地方代表的性格」から攻めるのはどうかと考えています。

 

  • 地方六団体(知事会、市長会、町村会、都道府県議長会、市議長会、町村議長会)との連携

小西議員の主張する「地方基本政策委員会」を設置し、「国と地方の協議の場」のように六団体の代表と定期的に協議を持つ。
※問題点…常任委員会の整理が必要であること(参の独自性である調査会を再編することも手か?)

 

  • 国会に提出された地方議会意見書に関する検討を行う

行政監視委員会の調査室が院に提出された意見書の分析・報告を『立法と調査』に行っているので、こうした件数の多い意見書に関して質疑、検討を行う。
※問題点…意見書には「夫婦別姓の推進」等、政府が乗り難いテーマも多い(参議院はともかく、政府や衆議院が容認するのか)

 

こうしたことこそ大手新聞社や有識者にも話していただきたいのですが、「投票価値の平等は民主主義の根幹~」と言ってよくわかっていない国民を煽るだけの劣化リベラル衆院選ともかく参院選にも言ってくるレベル)が多いので、困り果てています。
最高裁判決の「二院制における参議院の性格や機能及び衆議院との異同」という文字はお読みいただけないのでしょうか…

 

「投票価値の平等」を目的に合区を導入して、対象県の投票率低下(高知、徳島はいずれも2016、2019のワースト)、無効票率上昇(同)、つまり「投票意欲の減退」を招くなんて、本末転倒のお話です。
私人の体験談で恐縮ですが、投票権を得て十数年、「私の一票は地方の一票より価値がない」といって投票に行かない人は見たことがありません。むしろ向きになって行くでしょう。

 

自然災害への対応、コロナ感染症対策も県単位ということから、憲法上には確かに「都道府県」の位置付けがなくとも、選挙区の単位として都道府県のまとまりを用いる事は、なんらおかしい話でもありません。(令和元年仙台高裁・秋田支部での合憲判決にそのような趣旨があったはずです。)
もちろんここの手当、自民の掲げる92条改憲案の「基礎的地方公共団体」「広域地方公共団体」の位置付けを(47条改憲による実質的規定の創設より)先行することも考慮してほしいものです。

 

自民も立憲と幅を持って議論する用意がある、という話も漏れ聞いております。

10増10減を契機に衆参、与野党第一党が二院制の議論に意欲見せることは、この分野を追う者として嬉しいものです。
次期選挙の後、秋の臨時会からは二院制の在り方とともに、合区解消・都道府県単位選挙区の確立について議論が進むことを切に願います。

 

ここまでに。