とある事務方の備忘録

いち事務方の「私はこう考える」ブログ

がんばれ、農水省(ド直球)

色々と更新が滞っておりました。

 

緊急事態の解除など情報が出ておりますが、一番驚いたのは種苗法でしょうか。

国家公務員・検察庁同様、「ツイッターで有名人が叫べば政府・与党は諦める」という悪事例を作ることになりそうですが…そちらと違って種苗法の方は筋の悪い話ではない、むしろ育成者権の強化は然るべきと考えていたので、何とも微妙な心境です。

※「新型コロナに与野党一丸となって協力すべきだから不要不急の法案審議は避けるべき、対決法案は尚更」という立場には以前述べたとおりやや懐疑的です。必要性の評価は立場で違うと思いますが、役所も省益や一部の方の為に法案を出している訳ではありません。

 

私の頭の体操として整理をすると、

 

①個人農業権派

「原則、農家が農業を営むことは個々人の権利であり、農家は自由に栽培していいのだ」
知的財産権

「品種を改良する為に心血を注いだ方にはその努力に見合った権利が認められるべきだ」


という違った立場の方がそれぞれいるから、意見が衝突している話だと考えています。

言わずもがなですが、改正案は②の立場、反対派は①の立場です。

※苺ネタの日記等で匂わせていますが、私は②の考えの人間。

 

①の方々は、育成者権、つまり知的財産権の保護が強まれば個々の農家には活動制限/コスト負担(今回の改正案なら登録品種に該当する物の許諾料や事務負担)が伴う、農業に参入してきた企業がそれを悪用して育成者権という口実で個々の農家の権利を侵害してくることを懸念している。
②の方からすれば、合法的に購入された種苗や枝が目的外利用や海外持ち出しで勝手に増殖→いじって◯◯国産として売り出す、というとんでも事例が横行している(冬季五輪の苺の話とか)以上、育成者権を持つ人にエリア指定など栽培に関する権利を認めないと品種改良する方々のインセンティブが失われると懸念している。
 

今回、①側でハッシュタグに加わった方の大半は、全ての品種が許諾制度の射程範囲内となるという誤解から「農家の困窮」ということで声を上げたのでしょう。(無責任っぷりから少し扱いを雑にしますが、)某お香みたいな名前の女優もそちらかと。

一般品種/登録品種(今回の種苗法を改正されても許諾がいらないもの/いるようになるもの)の違いを説明して、一般品種(コシヒカリ、とちおとめ等、8割以上はこっち)を育成している方にダメージはないということは丁寧に説明した方がいいでしょうね。

※「元々、役所は一般/登録と品種を分けずに全部許諾制度にする狙いだった」という謎主張はよくわからないのでスルー。

 

それでも…という懸念の声を取り上げた東京新聞の記事(こちら特報部!というアジテーション担当コーナー)も拝見しました。在来種(これは一般品種となり、今回の許諾範囲には含まれない)が、地域ブランド化の流れの中で登録されてしまうのではないか?在来種を作っていたらいきなり企業から訴訟されないか?という話です。

品種登録は農水省の責任特性表に基づく審査がなされるはずですが…いずれにせよ、ここは誤解がないように、重ねて説明する必要があるのかもしれません。

 

言い方は悪いですが、①と②で完全に立場が異なる以上、分かり合えることはない話と正直思っています。一票の格差が云々の件で、弁護士グループと意見が噛み合わないように。

個々の農家の行動を縛るな、かつての小作人制度が企業のせいで復活するのは阻止したい、という立場の方に、「そもそもうちの国はそう簡単に籠絡できるほど品種単純じゃないですよ?」「うちの国にもサカタやタキイとか大手メーカーが、他にも中小のメーカーが沢山あるんですけど…」と説明しても、(モンサ◯ト=バ◯エルが来る!売国奴め!とか)会話が成立しないのは分かっています。

 

ただ、その状況で何もせず放置していいのか、レッドパールの故・西田さん(愛媛県の苺農家・品種改良家)のような人を生み出していいのかは、ゆめゆめ考えていただきたいのです。

臨時会に回ることで、少なくとも3ヶ月くらいは放置されるのでしょう。法律の施行時期とか、種苗の買付けのタイミングを考えると、後ろ倒しになればなるほど…うーむ。

 

某女優含めてよく理解せずにハッシュタグを付けて売国だ、農家を苦しめると無責任に拡散した方、

品種云々すら調べてないのに「見送りで農家の負担がなくなって良かった〜」という謎の感想を言っている方々。

 

こうしたおつむの方々を煽って、今後世論操作されていくのかな?と厭世的になりました。はい。

 

なるべく①②の双方に配慮しようとは思ったのですが、こうも①+賑やかしの方々に「見送りが決定で良かった」とか言われっぱなしというのもどうかと思うので、農水省激励?の記事を書きました。

正直怒りもありますが…農水省の方々や品種改良に携わる方々の落胆を思えば、微々たるもの。事務方風情の感想はここまでに。

 

悔しさをバネに、臨時会までも、臨時会でも頑張りましょう…海外での品種登録の促進、不正な流通の監視、やる事はまだまだあります。

事務方のひとりとして、微力ながら応援しています。