とある事務方の備忘録

いち事務方の「私はこう考える」ブログ

参議院の合区解消

有言不実行ではいけないので、連休初日ではありますが、参議院の合区解消について書いておきたいと思います。

 

まず合区(合同選挙区)について。

毎回、国政選挙後には「投票価値の不平等」の訴訟が弁護士団体らによって行われています。政権選択の院である衆議院の総選挙に対してやや政権からは遠い、参議院通常選挙にも違憲訴訟が行われ、最高裁より数回違憲状態(ただし選挙結果は無効ではない)だと判断されています。

かつては都道府県代表の性格が強いからと容赦されていたのですが、郵政民営化やねじれ国会を経て参議院の強さが確認されたこと、弁護士団体の投票価値平等のロビー活動もあり、投票価値の平等要請が参院選にも及ぶようになりました。

 

これまでは人口の少ない県の議員の定数を多い県に譲っていたけど、それでも違憲状態の判断は覆せなかった、よって平成28年の参院選では人口の少ない4県(鳥取・島根、高知・徳島)をそれぞれくっ付けて2県扱い、とする合区が行われました。

おかげで較差3.08倍、ようやく合憲という判決を得ましたが、4県の中で島根を除く3県で投票率が下がり、無効票も増えました。今後も政策の内容より、「どの県の出身者か?」「うちの県からは出せるのか?」で投票が行われることも考えられます。やはり、合区は失敗だったと言わざるを得ません。

都道府県というまとまりが、やはり一番歴史的、経済的、文化的に大きな意味を持っている。ただの便宜上の行政単位ではない、意見をまとめるには一番良い単位だと思います。

 

それでも、憲法に14条、15条などがある限り、投票価値の平等について最高裁が要請してくることは避けられない。いくら公職選挙法をいじっても判断は変わらない。

そこで憲法上に都道府県と都道府県選出についての根拠規定を設けたい、というのが自民の立場です。法律や政府見解をいくらいじっても憲法の規定がある限り解決できない問題は憲法に手を加えるしかない、ということはごもっともです。

 

対する批判としては、都道府県選出を書くと参議院憲法43条の「全国民の代表」という部分に抵触しないか?平等性の薄い選挙の参議院が平等性の強い衆議院の選択をストップし得る(ねじれ国会など)ことが正しいのか?など。

これもごもっともです。憲法に手を加えると、選挙制度の抱える問題で終わらず、参議院の在り方全体に問題が波及するので、公明など一部の党は消極的になっています。

 

一個人としては、衆参の同質化が進み、参議院不要論も出ている以上、参議院は選出方法を変えて、なおかつ権限を弱体するか専門性を特化するかに方向転換しなければならないと思っています。

憲法改正による合区解消は、参議院の在り方について権限弱体化(あるいは専門院化)や全都道府県同数選出も選択肢に入れて改革することを前提に、支持しています。

この改革は、公明や野党のように少しでも発言力を強めたい(現状からの変革を望まない)党ではなく、大与党の自民にしか出来ないことです。王者たる余裕から、真摯に向き合ってほしいですね。

 

なお、自民以外の合区に対するスタンスは、維新以外は「一部の県だけ不平等な取り扱いをするべきではない」という解消の必要性は認識しています。しかし、

公明→地方選挙区をブロック単位にし、ブロック内で大選挙区制・記名投票

共産→地方選挙区をブロック単位にし、ブロック内で比例代表

と、投票価値の平等に重きを置いての改革で、なおかつそれぞれ自党に有利なスタンスを出しています。単に選出方法を変えただけで参議院の権限改革には結び付かないので、私はあまり良いと思いません。

 

「地方選挙区の地方代表性は、ブロックでも維持できるし理解は得られる」という主張も、現在の衆議院の「北関東ブロック」「南関東ブロック」などを見れば、ブロックに地域代表性を見出している人もなかなかいないと思います。私自身、埼玉って南北どっちだっけ?と混乱します。

ブロックを志向する2党には申し訳ないのですが、所詮はただ範囲が広くなった合区だと思うのです。いつかは限界が来ます。

 

維新は道州制一院制を目指す過程として、「合区を経て都道府県という古きしがらみを無くしていこう」と言っているのですが、「道州制を導入したら関西州の覇権を握るのは大阪だ!」という魂胆が見えているので、到底支持できません。

憲法改正による合区は田舎の選挙に強い自民の党利党略と維新は言います。その面があるのは間違ってはいませんが、道州制によるメリットを虎視眈々と狙っている維新がそれを言ってもなあ、とも思うのです。

無駄をなくせと主張することは決して悪くはないのですが、どうも維新は聞こえのいいことをなにかと発言する方向に、ちょっと変調している気がします。

 

民進は党内に多々異論がありますが、選挙制度に詳しい議員らは主に選出方法の変更を提案しています。

「投票の有する影響力の平等」という最高裁の判決の文言は実は一度も「議員1人に対する人口」とは言われてないので、連記制(東京や大阪、神奈川などで1人が2名以上に投票できる)というトリッキーな方法も、その1つです。

連記制も考慮する価値はあるし、割と実現可能性は低くないのですが、参議院改革派としてはやはり自民の方がしっくりくるでしょうか。

 

この議論は単に「投票価値をそんなに気にするなら田舎に行け」でも、

「自民が田舎に強いからって憲法をねじ曲げようとしている」でも、

あるいは「議員に払う国民の税金が勿体ない」でも、終わってはいけないと思っています。

 

それぞれの党の主張を聞いて、選挙制度はどうあるべきか、よろしければ参議院の在り方はどうあるべきか、考えて貰えたら幸いです。